- グッズ用のイラストは、作るグッズの種類と製造先の入稿条件が決まってから描き始めるのが基本。順番が逆だと描き直しが出やすい。
- アクリルや透明素材には白版、型抜きにはカットラインなど、グッズ特有のデータが要る。誰が作るのかを最初に決めておく。
- 画面で見た色と刷り上がりの色は同じにならない。素材によっても変わるため、色校正やサンプルで確認する前提で進める。
- 小さな面積で使うグッズほど、線の細さや描き込みより、遠目の見分けやすさが優先される。
- 販売するのか、無料で配るのかで利用範囲の取り決めが変わる。既存キャラクターを使う場合は権利者の確認も要る。
グッズの絵は「描く前」に決まることが多い
アクリルスタンド、缶バッジ、ステッカー、Tシャツ、トートバッグ。グッズ用のイラストを頼むとき、多くの人は「どんな絵にするか」から考え始めます。けれど実際には、絵の中身より先に決まっていることのほうが多いのがグッズの仕事です。
グッズには形があり、大きさがあり、印刷できる範囲があります。素材によって出せる色が違い、製造先ごとに受け付けるデータの形式が決まっています。これらは絵を描いたあとで合わせようとすると、構図の組み替えや描き直しにつながります。作家の腕の問題ではなく、条件を渡す順番の問題です。
この記事では、グッズ用のイラストを依頼するときに、発注する側が先に決めておくと話が早く進むことを、実務の順に並べます。パッケージの絵が売り場でどう働くかという話はパッケージイラストの読み物に、依頼できる作家の一覧はパッケージ・グッズのイラストレーターまとめにまとめています。ここで扱うのは、その手前の「頼み方」です。
まず決めるのは、グッズの種類と製造先
依頼の出発点は、作るグッズの種類と、どこで作るかです。同じキャラクターの絵でも、缶バッジとTシャツでは求められる条件がまったく違います。
| グッズ | 絵に効いてくる条件 |
|---|---|
| アクリルスタンド・キーホルダー | 輪郭に沿って型抜きされる。透明素材のため、色の下に白を敷くかどうかを決める必要がある |
| 缶バッジ | 円形で、縁は側面に巻き込まれる。中央に主役を寄せ、外周は見えなくなる前提で描く |
| ステッカー | 形に沿って切るか、四角く切るか。屋外で使うなら色あせへの配慮も話題になる |
| Tシャツ・トートバッグ | 布の色が下地になる。刷り方によって使える色数やグラデーションの扱いが変わる |
| クリアファイル・紙もの | 面積が大きく、細部まで見られる。紙か透明素材かで白の扱いが変わる |
製造先が決まっていれば、その会社が公開している入稿ガイドを作家に渡してください。テンプレートのデータが用意されていることも多く、それがあるだけでサイズや余白の行き違いはほとんど防げます。製造先がまだ決まっていないなら、「どのグッズを作るか」だけでも先に決め、作家と一緒に製造先の条件を確認する進め方もあります。
キャラクターそのものを新しく作るところから外に出したいなら、話は一段大きくなります。その場合はキャラクター制作を外注するときの進み方を先に読んでおくと、グッズ化までの道筋が見えやすくなります。
入稿データは「誰が作るか」まで決める
グッズには、絵そのものとは別に、製造のためのデータが要ることがあります。代表的なのが次のようなものです。
- 白版……透明な素材や色のついた素材に刷るとき、色の下に敷く白の範囲を示すデータ
- カットライン……アクリルやステッカーを形に沿って切り抜くための線
- 塗り足し……裁断のずれで白い縁が出ないよう、仕上がりの外側まで絵を広げておく部分
- レイヤーの分け方……パーツごとに分けておくと、あとから配置や色の調整がしやすい
- カラーモード……印刷に回すとき、製造先がどの形式で受け付けるか
見落とされやすいのは、これらを誰が作るのかという点です。描くところまでを受ける作家もいれば、入稿データの作成まで含めて受ける作家もいます。製造先が作成を代行してくれる場合もあります。どれが良いということではなく、決まっていないことが問題になります。最初の相談で「入稿データの作成は作業範囲に含むか」を確かめ、含まないなら社内やデザイナー、製造先の誰が担うのかを決めておいてください。
解像度やサイズの具体的な数値は、製造先の指定に従うのが確実です。ここは作家に任せるより、発注する側が製造先の指定を取りに行って渡すほうが早く確実に進みます。
色は「画面どおりには出ない」前提で進める
グッズの発注でいちばん多い戸惑いが、色の違いです。画面は光で色を出し、印刷はインクで色を出します。そのため、画面で見えている鮮やかな色の一部は、印刷ではそのまま再現できません。とくに蛍光色に近い鮮やかな色や、暗い部分の細かな階調は差が出やすいところです。
さらに、同じデータでも素材によって色の出方が変わります。紙、アクリル、布、金属では下地の色や質感が違い、同じ赤でも印象が変わります。布の場合は生地の色が透けることもあります。
だから、色が大事なグッズでは、確認の工程を最初から組み込んでおくのが安全です。
- 色校正やサンプルを取るかどうかを、発注の段階で決める
- キャラクターの色が決まっているなら、その指定を作家と製造先の両方に渡す
- 「画面の色と同じにしてほしい」ではなく、「どの色を優先して合わせたいか」を伝える
色を完全に一致させることより、どこを守ればそのキャラクターに見えるのかを決めておくほうが、結果は安定します。肌の色なのか、髪の色なのか、ブランドの色なのか。優先順位がはっきりしていれば、作家も製造先も判断しやすくなります。色の考え方そのものはイラストと色の記事でも触れています。
小さな面積ほど「遠目の見分けやすさ」が効く
缶バッジやキーホルダーのように小さなグッズは、手に取って近くで見られる一方で、鞄につけて遠くから見られることも多いものです。細い線や細かな描き込みは、縮小されると潰れて見えなくなります。小さな面積で使うグッズほど、描き込みの量より、輪郭のはっきりさや主役と背景の明るさの差のほうが効いてきます。
逆に、クリアファイルやTシャツの背面のように大きく使うグッズでは、細部まで見られます。同じ絵を小さなグッズと大きなグッズの両方に使うと、どちらかで無理が出やすいのはこのためです。
複数のグッズを作るなら、主に使うグッズを1つ決めて、その条件に合わせて描いてもらうのが現実的です。ほかのグッズは、切り出しや配置の調整で対応できるか、あるいはデフォルメした別の絵を用意するかを相談します。最初に作るグッズの一覧を見せておけば、作家はどの絵がどこに向くかを考えながら描けます。
小ロットと量産で、進め方が変わる
グッズは、作る数によって進め方が変わります。イベントで少数を配る場合と、店頭やECで継続的に売る場合とでは、確認にかける手間も、取り決めておくことも違います。
| 観点 | 少数を作る場合 | 継続的に売る場合 |
|---|---|---|
| 製造先 | 小ロット対応の製造先を選ぶことが多い | 再生産や品質の安定を重視して選ぶ |
| 色の確認 | サンプルで確かめる程度で進めることもある | 色校正を入れ、基準の色を決めておく |
| データの管理 | その回で使えればよい | 再生産に備え、最終データの保管先を決める |
| 取り決め | 使うグッズと配布の範囲を書く | 販売の期間、再生産、追加のグッズへの展開まで書く |
とくに継続的に売る場合は、再生産と追加展開の扱いを最初に話しておくと、あとで慌てずに済みます。売れたので新しい種類のグッズを足したい、というのは自然な流れですが、最初に決めた範囲の外にあることが多いからです。
販売するかどうかで、権利の決め方が変わる
グッズの依頼で、絵の内容と同じくらい大事なのが利用範囲の取り決めです。分かれ目のひとつは「販売するかどうか」。社内やイベントで無料で配るノベルティと、値段をつけて売る商品とでは、別の話として扱われるのが一般的です。
依頼の時点で書いておきたいのは、次のような点です。
- 作るグッズの種類……今回作るものと、将来作るかもしれないもの
- 販売の有無……無料配布か、販売か。販売ならどこで売るか
- 期間……期限を決めるのか、決めないのか
- 加工の範囲……切り抜きや色の調整、配置の変更をどこまでしてよいか
- クレジット……作家名を商品や台紙に入れるかどうか
既存のキャラクターや作品を使ったグッズを作る場合は、もう一段の確認が必要です。キャラクターの権利者と、絵を描く作家が別になることがあるためです。誰の許諾がどこまで要るのかは、案件ごとに異なります。権利の基本的な考え方はイラストの著作権はどこまで移るのかで整理しているので、あわせて読んでください。
依頼文に書くこと
ここまでの内容を、最初の一通に落とすと次のような形になります。
件名:グッズ用イラスト制作のご相談(◯◯/販売用グッズ)
◯◯様
はじめてご連絡いたします。△△の□□と申します。◯◯様の(作品名)を拝見し、デフォルメの効いた線と色の明るさが、作りたいグッズの雰囲気にとても近いと感じてご連絡しました。
弊社オリジナルキャラクターのグッズとして、アクリルスタンドと缶バッジに使うイラストを1点お願いできればと考えています。主に使うのはアクリルスタンドで、缶バッジには顔まわりを切り出して使う想定です。製造先は決まっており、入稿ガイドを添付します。白版とカットラインの作成をお願いできるかどうか、あわせてご相談させてください。グッズはイベントとECで販売する予定です。利用範囲、ご予算、納期についてはご都合を伺いながら決めたいと考えています。◯月◯日までにお返事いただけますと幸いです。
依頼文の組み立て方そのものはイラスト依頼の例文とテンプレートで詳しく説明しています。グッズの場合は、そこに「作るグッズと製造先」「入稿データの担当」「販売の有無」を足すイメージです。発注全体の流れはイラスト発注の完全ガイドにまとめています。
送る前に見直す6点
- 作るグッズの種類を書いたか……主に使うグッズはどれか
- 製造先の入稿ガイドを渡せるか……まだなら、決まり次第渡すと伝える
- 入稿データを誰が作るか決めたか……白版・カットライン・塗り足し
- 色の優先順位を決めたか……どの色を守ればそのキャラクターに見えるか
- 販売するかどうかを書いたか……無料配布と販売では取り決めが変わる
- 将来の広がりを伝えたか……再生産や新しいグッズの可能性
グッズは、絵が誰かの手元に残り、毎日の暮らしの中で見られるものです。だからこそ、絵の中身を決める時間と同じくらい、どう作り、どう届けるのかを決める時間に価値があります。条件が先に揃っていれば、作家はその枠の中で最もよく見える絵を考えることに集中できます。
なお、ここで扱ったのは依頼する側が押さえておくとよい一般的な考え方です。入稿の条件は製造先ごとに異なるため、必ず各社の指定を確認してください。また、契約や権利の取り決めについて判断に迷う場合は専門家にご相談ください。
- グッズ用のイラストは、普通のイラストと何が違うのですか?
- 絵そのものより、作るための条件が先に決まっている点が違います。グッズの形や大きさ、印刷できる範囲、素材、製造先が求めるデータの形式によって、描ける構図や色の使い方が変わります。依頼の前に作るグッズと製造先を決めておくと、描き直しを減らせます。
- 白版やカットラインは、イラストレーターに作ってもらえますか?
- 作家によって対応が分かれます。描くところまでを受ける作家もいれば、入稿データの作成まで含めて受ける作家もいます。製造先が作成を代行してくれる場合もあるため、最初の相談で「入稿データは誰が作るか」を決め、作業範囲として書いておくと行き違いが起きません。
- 画面で見た色と、できあがったグッズの色が違うのはなぜですか?
- 画面は光で色を出し、印刷はインクで色を出すため、再現できる色の範囲が異なるからです。さらに素材によっても色の出方が変わります。色が大事なグッズでは、色校正やサンプルで確認する工程を最初から組み込んでください。
- 描いてもらったイラストを、あとからグッズにして販売してもいいですか?
- 最初に決めた利用範囲に販売が含まれているかどうかで決まります。個人で楽しむ前提や、無料配布の前提で受けた絵を販売に使う場合は、あらためて相談が必要になるのが一般的です。販売の見込みがあるなら、依頼の時点で伝えておくほうが手続きの見通しが立ちます。
- 1つのイラストを複数のグッズに使い回せますか?
- 取り決め次第です。使うグッズの種類を利用範囲に並べておけば問題になりにくくなります。ただし、グッズによって適した構図や余白が違うため、同じ絵をそのまま全部に使うと見え方が崩れることがあります。主に使うグッズを1つ決め、ほかは切り出しや配置の調整で対応できるかを相談してください。
※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。
OSERU IMG.
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