SNSアイコンのイラストを依頼する——個人と法人で変わる、決めておくこと

読了7分 推し絵のススメ 編集部
机に並んだ丸いプロフィール画像の枠と、そこに収まった人物のイラスト。手前にノートとペン

メインビジュアル:推し絵のススメ編集部(本記事のために制作したオリジナルイラスト)

■この記事の要点
  • アイコンは小さく・丸く・他のアイコンと並べて見られる。原寸の美しさより、縮小したときの見分けやすさが優先される。
  • 個人利用と法人・事業アカウントでは、決めるべきことが変わる。分かれ目は「事業に使うかどうか」。
  • 依頼の前に決めるのは、使うアカウント/用途の広がり/背景の扱い/色数と明度/納品サイズ/利用範囲の6つ。
  • 丸く切られることを前提に、顔や主役は中央へ寄せ、四隅は切り落とされてよい余白として設計する。
  • 名刺やグッズ、看板へ広げる可能性があるなら、最初にその見込みを伝えておくほうが結果的に安く済む。

アイコンは「小さく、丸く、並べて」見られる

SNSのアイコンは、作品としてじっくり眺められる絵ではありません。タイムラインの左端に数十ピクセルで並び、他人のアイコンと隣り合い、しばしば円形に切り抜かれて表示されます。原寸で見たときの完成度より、縮小したときに「あの人だ」と分かることのほうが先に効きます。

だから、アイコンの依頼は普通のイラストの依頼と少し勝手が違います。描いてほしいモチーフを伝えるだけでなく、どこにどう表示されるのかを渡す必要がある。ここを省くと、きれいなのに小さくすると何が描いてあるか分からない絵が上がってきます。作家の腕の問題ではなく、条件を渡していないことによる行き違いです。

縮小に強いアイコンには、いくつか共通点があります。主役が中央に寄っていること。輪郭がはっきりしていること。背景と主役の明度差が大きいこと。色数が絞られていること。細かい模様や細い線に情報を預けていないこと。いずれも「小さくなったときに残るもの」を選んでいるという意味では同じ考え方です。

個人利用と、法人・事業アカウントの違い

アイコンの依頼でいちばん見落とされるのが、この線引きです。分かれ目は「事業に使うかどうか」。趣味のアカウントに使うのか、仕事の顔として使うのかで、決めておくことが変わります。

個人アカウントで使う場合

趣味のアカウントで使うだけなら、決めることは多くありません。使うアカウント、納品するサイズとデータ形式、そして加工してよいかどうか。この3点が押さえてあれば、やりとりはだいたい収まります。

それでも「どのアカウントで使うか」は書いておいてください。1つのつもりで頼んだアイコンが、いつのまにか複数の場所で使われていた、という状態は作家側からは見えません。最初に「自分が運用するSNSアカウントで使います」と一文入れておけば、後から悩まずに済みます。

法人・事業アカウントで使う場合

会社や店舗、個人事業のアカウントで使うなら、扱いは広告物に近づきます。確認しておきたいのは次のあたりです。

決めること なぜ要るか
使うアカウントの範囲 公式アカウントだけか、担当者の個人アカウントにも使うのか
期間 期限を切るのか、期限なしにするのか。リニューアルの周期も考える
媒体の広がり SNSだけか、Webサイトのプロフィール欄や名刺、資料にも使うのか
独占の有無 同じ絵柄を他社にも出してよいか。ブランドの顔にするなら効いてくる
加工の可否 季節ごとの色替えや、帽子を足すといった派生を作るか
クレジット表記 作家名を出すか。出す場合、どこに、どの表記で出すか

とくに独占と加工は、あとから追加しようとすると条件が変わりやすい項目です。事業の顔として長く使うつもりなら、最初に相談しておくほうが結果的に早く安く済みます。権利の考え方そのものはイラストの著作権はどこまで移るのかで整理しているので、あわせて読んでください。

依頼の前に決める6項目

アイコンの依頼で、最初のやりとりに入れておくと話が早い項目を並べます。埋まらない欄があるなら、それは相手に聞くことではなく、自分の側でまだ決まっていないことです。

項目 書く内容の例
① 使うアカウント 自分が運用するSNSアカウント/会社の公式アカウント1つ
② 用途の広がり いまはSNSだけ。将来、名刺に載せる可能性がある
③ 背景の扱い 背景ごと描いてほしい/人物だけで背景は透過
④ 色数と明るさ 色は3〜4色。暗い背景のアプリでも沈まない明るさにしたい
⑤ 納品サイズ 表示サイズより大きめの正方形。円形で切られても成立する構図で
⑥ 利用範囲 非独占。加工はサイズ変更のみ。クレジットはプロフィール欄に記載

③の背景は見落とされがちですが、影響が大きい項目です。背景ごと描いてもらうと世界観は出しやすい反面、他の用途へ持っていきにくくなります。透過で人物だけをもらっておくと、あとから背景色を変えて別の場所に置けます。どちらが良いかは、②でどこまで広げるつもりかによります。

画風の伝え方に迷ったら、線の強さ・塗りの厚み・質感の有無という三つの軸で言い換えるのが確実です。詳しくは画風タッチ図鑑にまとめています。

丸く切られる前提で設計する

多くのサービスは、正方形の画像を受け取って、表示のときに円形へ切り抜きます。つまり四隅は見えません。ここを知らずに四隅まで描き込むと、納品物としては正しいのに、実際の画面では意図した構図になりません。

設計としては、正方形で作りつつ、円の内側だけで成立させるのが基本です。顔や主役は中央へ寄せる。文字を入れるなら、円の縁から十分に離す。四隅は「切り落とされてよい余白」として扱う。この前提さえ共有できていれば、作家は自然にそう描いてくれます。

もうひとつ、暗い背景で表示されたときの見え方も確認してください。多くのアプリにはダークモードがあり、白い背景を前提にした淡いアイコンは背景に溶けます。輪郭をわずかに締めるか、背景に色を敷くかで解決できますが、これも先に伝えておく話です。

サイズとデータ形式で確認すること

納品データは、いま使う場所だけでなく、少し先まで見て決めます。あとから作り直すより、最初に大きめでもらっておくほうが安く済むからです。

  • 原寸データ……実際に表示されるサイズより大きく。縮小はできても拡大はできない
  • 背景の透過……透過のPNGが要るのか、背景込みで良いのか
  • 色の指定……印刷にも使うなら、画面用の色と印刷用の色は別物として扱う
  • ベクターデータ……看板や大きな印刷物に広げる見込みがあるなら相談する
  • 派生サイズ……ヘッダー画像やサムネイル用の切り出しが要るなら、点数として最初に数える

「とりあえず一番大きいデータをください」と頼みたくなりますが、これは作業内容が変わる依頼です。必要なものを具体的に挙げるほうが、受ける側も見積もりを組みやすくなります。

名刺やグッズへ広げたくなったとき

アイコンは、気に入るとすぐ他の場所で使いたくなります。名刺に入れる、ステッカーにする、ノベルティにする、店頭の看板に出す。どれも自然な広がりですが、最初に決めた利用範囲の外にある可能性があります。

広げる見込みが少しでもあるなら、依頼の時点で「将来こういう使い方をするかもしれません」と伝えてください。範囲を広く取っておくのか、そのときにあらためて相談する形にするのか、どちらを選ぶにしても、話が出ているのといないのとでは進め方が変わります。

とくにグッズとして販売する場合は、販売という行為そのものが範囲に含まれているかどうかが論点になります。社内で配るノベルティと、値段をつけて売る商品は別の話として扱われるのが一般的です。

依頼文に書くこと

ここまでの内容を、そのまま最初の一通に落とすと次のような形になります。

件名:SNSアイコンのイラスト制作のご相談(◯◯/個人アカウント用)

◯◯様
はじめてご連絡いたします。△△と申します。◯◯様の(作品名)を拝見し、線のやわらかさと色の温度感が、お願いしたい雰囲気にとても近いと感じてご連絡しました。

自分が運用しているSNSアカウント2つで使うアイコンを1点お願いできればと考えています。背景は透過で人物のみ、色は3〜4色、暗い背景でも沈まない明るさを希望します。円形に切り抜かれる前提で、主役は中央に寄せていただけると助かります。納品は正方形の大きめのPNGでお願いできればと思います。利用範囲は非独占、加工はサイズ変更のみ、クレジットはプロフィール欄に記載します。ご予算は◯円〜◯円、納期は◯月末を想定しています。難しい場合は遠慮なくお知らせください。◯月◯日までにお返事いただけますと幸いです。

依頼文の組み立て方そのものはイラスト依頼の例文とテンプレートで8項目に分けて説明しています。アイコンの場合は、そこに「丸く切られる前提」と「背景の扱い」を足すイメージです。

送る前に見直す5点

  • どのアカウントで使うか書いたか……1つなのか、複数なのか
  • 事業で使うかどうか書いたか……趣味と仕事では取り決めが変わる
  • 背景の扱いを決めたか……透過か、背景込みか
  • 円形で切られる前提を伝えたか……四隅は見えなくなる
  • 将来の広がりを伝えたか……名刺、グッズ、看板の可能性

アイコンは、一枚の絵であると同時に、これから何年も自分の代わりに人前に立つものです。だからこそ、絵の内容を決める時間と同じくらい、どこでどう使うのかを決める時間に価値があります。そこが決まっていれば、作家は安心して線を引けます。

なお、ここで扱ったのは依頼する側が押さえておくとよい一般的な考え方です。実際の取り決めは個別の事情で変わるため、契約の内容について判断に迷う場合は専門家にご相談ください。

■よくある質問
SNSアイコンのイラストは、個人でも依頼できますか?
できます。個人か法人かで断られるわけではなく、変わるのは契約や請求の手続きと、使ってよい範囲の決め方です。最初の連絡で、個人の趣味のアカウントで使うのか、仕事のアカウントで使うのかを書いておくと、受ける側が進め方を組み立てやすくなります。
個人用に描いてもらったアイコンを、あとから仕事のアカウントでも使えますか?
使ってよい範囲に何と書いてあるかで決まります。個人利用の前提で受けた仕事を、事業の告知や商品の販売に使う場合は、範囲が変わるためあらためて相談が必要になるのが一般的です。仕事で使う見込みが少しでもあるなら、最初からその前提で頼むほうが手続きも金額も見通しが立ちます。
アイコンは正方形と円形、どちらで作ってもらうのがよいですか?
正方形で作り、円形で切られても成立する構図にするのが基本です。多くのサービスは正方形の画像を受け取って表示のときに丸く切り抜くため、四隅は見えなくなる前提で設計します。
納品してもらうデータは何を指定すればいいですか?
使う場所によって必要なものが変わります。SNSだけならPNG(背景の透過の有無を指定)と、実際に表示されるサイズより大きめの原寸データ。将来、名刺や印刷物に使う可能性があるなら、印刷に耐える解像度、あるいはベクターのデータを相談してください。
アイコンを少しトリミングしたり、色を変えたりしてもいいですか?
加工の可否は取り決め次第です。著作者人格権のうち同一性保持権に関わるため、切り抜きや色の変更を予定しているなら、その範囲を最初に書いておくと安全です。
同じ絵を複数のSNSで使ってもいいですか?
複数のSNSで同じアイコンを使うこと自体は、利用範囲に「本人が運用するSNSアカウント」といった形で含めておけば問題になりません。むしろ媒体をまたいで同じ顔を使うことは、覚えてもらううえで効果があります。範囲の書き方だけは最初に合わせておいてください。

※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。

OSERU IMG.

この記事の内容を、実際の制作で相談できます

OSERU IMG. はイラストレーター・キャラクターデザイナー・モーショングラファーが所属する クリエイティブスタジオです。作風・実績から探して、そのまま相談できます。 「まだ決まっていない」段階のご相談も歓迎です。

OSERU IMG. のクリエイター. CREATORS

所属クリエイターを一覧で見る →

あわせて読む.RELATED

イラストマップの制作を依頼する——載せる情報・デフォルメ・権利で先に決めておくこと

観光パンフレットや商店街、キャンパス、イベント会場のイラストマップを外注するときは、絵柄より先に、誰が何のために見る地図なのか、載せる情報と省く情報、元にする地図の権利を決めておくと進みます。費用が条件で変わる理由と進め方も整理しました。

→

イラスト依頼の例文とテンプレート——最初の一通で伝えるべき8項目

イラストを依頼する最初の一通に何を書けばいいのか。そのまま使える例文と、過不足なく伝わる8項目のテンプレートをまとめました。断られにくい書き方、曖昧になりがちな言葉の言い換え、修正をお願いするときの伝え方、送る前に見直す5点まで、実務の順番どおりに扱います。

→

イラスト発注の完全ガイド——目的の言語化から利用範囲・修正回数・予算感まで

「思ってたのと違う」はなぜ起きるのか。イラストを仕事で発注するときの実務ガイド。目的の言語化、用途とサイズ、参考の渡し方、著作権と使用許諾の違い、修正回数、予算感、マネジメント経由と直依頼の差までまとめました。

→

イラスト・キャラクターの
相談先をお探しですか?

OSERU IMG. はイラストレーター・キャラクターデザイナー・モーショングラファーが所属するクリエイティブスタジオです。作風から探せます。

お問い合わせ →