キャラクター制作を外注する——自社で作るか外に出すかの判断と、発注後に進むこと

読了8分 推し絵のススメ 編集部
キャラクター設定シートのイメージ。マスコットの正面と表情差分が並んでいる

メインビジュアル:推し絵のススメ編集部(本記事のために制作したオリジナルイラスト)

■この記事の要点
  • 1枚のイラストは完成したら終わる仕事だが、キャラクターは完成してから始まる仕事。
  • 使い始めると必ず「あとから欲しくなるもの」(横向き、怒った顔、全身、透過データ、着ぐるみ)が出てくる。どこまで先に用意するかが要点。
  • 内製か外注かは、絵が増える見込み/絵柄を確立させたいか/社内に決める人がいるか/権利をどう持ちたいか、の4軸で判断する。
  • ★4軸のうち「決める人がいるか」だけは、外注の前に必ず埋める。ここが空だと内製でも外注でも同じ場所でつまずく。
  • 外注先は3タイプ。個人の作家に直接/制作会社・スタジオ/その中間。どれが良いという順位はなく、得意な場面が違う。
  • 納品物は絵の枚数で数えない。設定画(正面・横・背面)、表情差分、色の指定、レイヤー分けデータ、書き出し済み画像をリストで合意する。
  • 権利は3点。譲渡か許諾か/誰が「次」を描くのか/改変してよい範囲。とくに2点目は見落とされやすい。
  • 外注で受け取るべきものは絵ではなく、この先も増やせて社内の誰が扱っても崩れない状態。

キャラクターを作ろうという話が出たとき、最初に浮かぶのは「誰に描いてもらうか」だと思います。ところが実務でつまずくのは、たいてい絵の手前にある体制の問題です。誰が設定を決めるのか、誰が使い方を承認するのか、半年後に新しい絵が必要になったとき誰に頼むのか——ここが曖昧なまま絵だけが出来上がると、そのキャラクターは一度きりのイラストとして終わってしまいます。

この記事では、キャラクター制作を外に出すかどうかの判断と、外注したときに何がどの順で進むのかを、発注する側の視点で整理します。「どう設計すれば強いキャラクターになるか」という設計論そのものはキャラクターデザインの基本にまとめてあるので、必要に応じてそちらを読んでください。

「キャラクターを作る」は、絵を1枚描くことではない

イラストの発注と、キャラクター制作の発注は、似ているようで性質が違います。1枚のイラストは完成したら終わる仕事ですが、キャラクターは完成してから始まる仕事です。

使い始めると必ず、最初に描いた1枚には無かった要求が出てきます。横向きが欲しい、怒った顔が欲しい、全身が欲しい、背景が抜けているデータが欲しい、着ぐるみにしたい——この「あとから欲しくなるもの」をどこまで先に用意するかが、キャラクター制作の発注を難しくしている要因です。

1枚のイラスト キャラクター
ゴール その絵が完成すること 使い続けられる状態になること
必要な成果物 絵そのもの 絵+設定+差分+使い方の決めごと
関わる期間 納品までで完結しやすい 運用が始まってからも続く
社内で必要なもの 発注担当者 設定を決める人と、使い方を承認する人
失敗の形 イメージと違う絵が来る 絵はあるのに使えない・増やせない

つまり見積もる対象は絵の枚数ではなく、どこまでの状態を作ってもらうかです。ここを決めずに「キャラクターをお願いします」と伝えると、作り手は1枚のイラストとして受け取るか、フルセットの前提で受け取るかのどちらかになります。見積もりが想像と大きくずれるのは、多くの場合この読み違いから起きます。

自社で作るか、外に出すか——判断の4つの軸

社内にデザイナーがいる会社では、内製という選択肢が当然出てきます。どちらが優れているという話ではなく、向いている条件が違うと考えたほうが判断しやすくなります。

軸1:この先どれくらい絵が増えるか

増える見込みが強いなら、内製のほうが動きは速くなります。季節ごとの差分やSNS用の小さな絵は、社内で描けると圧倒的に回ります。反対に、年に数回しか描かないなら、その頻度のために社内に技能を維持するのは負担になります。

軸2:絵柄をどれだけ確立させたいか

キャラクターの強さは、上手さよりも他と見分けがつくことから来ます。「うちの絵」と認識される絵柄を作るのは、器用にこなすのとは別の能力です。社内の誰が描いても同じ顔になる決めごとを作れるかどうかが分かれ目になります。

軸3:社内に「決める人」がいるか

外注でいちばん効率を落とすのは、戻ってきたラフに対して誰が判断するか決まっていない状態です。関係者が増えるほど、修正の指示が互いに矛盾しはじめます。この体制が作れないなら、外注しても内製しても同じ場所でつまずきます。

軸4:権利をどう持ちたいか

内製なら権利関係はシンプルになりやすい一方、外注では最初の契約で決めた範囲が長く効きます。キャラクターは長く使う資産なので、ここを曖昧にしたまま進めると、あとから広げにくくなります。この点はあとの章で詳しく扱います。

4つ全部が外注に向いている必要はありません。軸3(決める人がいるか)だけは、外注の前に必ず埋めてください。ほかの3つは進めながら整えられますが、これだけは進行そのものを止めます。

外注先は3タイプある。向き不向きで選ぶ

外に出すと決めたあと、次に迷うのが依頼先です。大きく3つのタイプがあり、得意な場面が違います。どれが良いという順位はありません。

タイプ 向いている場面 気をつける点
個人の作家に直接 絵柄をその人の個性ごと採用したいとき。絵柄の指名で選ぶ座組み 作家1人の稼働に依存する。別案件と重なったときの代わりが立てにくい
制作会社・スタジオ 設定づくりから差分・決めごとの整理まで、一式で組み立てたいとき 絵柄は担当する作家によって変わる。誰が描くかを事前に確認しておく
エージェンシー・マネジメント経由 候補を比べて選びたいとき。契約や請求の窓口を1つにまとめたいとき 作家との距離が一段遠くなる。細かなニュアンスの伝達に工夫が必要

判断を助ける質問は1つだけで足ります。「この絵柄でなければ意味がないか」です。絵柄そのものが企画の核なら個人への直接依頼が合います。一方、キャラクターの役割や運用のほうが重いなら、工程を抱えられる体制のほうが安心して任せられます。

なお発注の事務手続き、参考イメージの渡し方、修正回数の扱いといった発注全般の作法はイラスト発注の完全ガイドで共通に扱っています。ここではキャラクター特有の部分に絞ります。

発注後は何が、どの順で進むのか

キャラクター制作は、ふつうのイラストより工程が多くなります。全体像を知っておくと、どこで自分が呼ばれるのかが分かり、社内の予定を立てやすくなります。

段階 作り手がやること 発注側がやること
①オリエン 役割・使う場所・避けたい表現を聞き取る 決まっていないことを洗い出して共有する。ここがいちばん重要
②方向性の提案 言葉や簡単な絵で方向性の候補を出す 1案に絞る。複数を混ぜようとしない
③ラフ 顔・体型・シルエットを線で当たる 大きく動かせる最後の機会。社内の意見をここで集約する
④本描き 線と色を仕上げる 細部の指摘にとどめる。方向性の再検討はしない
⑤展開物 表情差分・ポーズ・向き違いなどを起こす 実際に使う場面を挙げて、必要な差分を具体的に指定する
⑥決めごとの整理 使ってよい形・崩してはいけない点を文書にまとめる 社内の誰が読んでも分かるか確認する

期間は工程の数と社内確認の回数でまるごと変わるため、一律の目安を出しても当てになりません。見積もりを取るときは金額と一緒に各段階でこちらの返事を待つ日数を聞いておくと、自社側のスケジュールが崩れにくくなります。進行が止まるのは作り手側ではなく、社内確認のほうが多いからです。

③ラフのあとに方向性を戻すと、ほぼ最初からやり直しになります。1枚のイラストなら描き直しで済みますが、キャラクターは後続の差分すべてに影響するため、巻き戻しの範囲が段違いに広くなります。社内の意見はラフの段階で出し切るのが、結果的にいちばん早い進め方です。

渡すもの・受け取るもの

進行を軽くするのは、話し合いの回数よりも最初に渡す情報の質です。次の項目が埋まっていれば、オリエンは一度で済みます。

  • 役割:このキャラクターに何をさせたいのか(案内役、看板、擬人化など)
  • 出る場所:Webのどこ、印刷物、動画、店頭など、実際に置く場面
  • 相手:誰に向けた顔なのか。子ども向けと専門職向けでは描き方が変わる
  • 避けたいこと:業界の慣習、過去に社内で却下された方向性
  • 先に決まっている制約:既存のロゴやコーポレートカラーとの関係
  • 増える予定:この先どんな絵が必要になりそうか

特に最後の1つを伝えておくと、作り手は増やせる形で最初の絵を設計できます。あとから「横向きも」と言われて初めて立体を考え始めるのと、最初から前提に入れて描くのとでは、手戻りの量が違います。

納品物は「絵」で数えない

受け取るもののリストを、発注の段階で文字にしておいてください。絵の枚数だけで合意すると、使う直前に足りないものが見つかります。

納品物 何に使うか
設定画(正面・横・背面) 別の作家が描くときの基準になる
表情差分 SNSやバナーで同じキャラを使い回すため
色の指定 印刷と画面で同じ色に見せるための基準
レイヤーの分かれたデータ 背景を外す・一部を差し替えるといった編集のため
書き出し済みの画像 現場がすぐ使える形。背景の透過の有無も指定する
使い方の決めごと 社内の誰かが意図せず変形させてしまうのを防ぐため

「元データはもらえますか」という確認も忘れないでください。編集できるデータを渡すかどうかは作り手の方針によって違い、渡す場合でもどこまで手を入れてよいかは別の取り決めになります。データがあることと、自由に改変してよいことは同じではありません。

権利は、1枚の絵より慎重に決める

キャラクターは長く使い、しかも使い方が増えていきます。だからこそ、単発のイラストより権利の取り決めが重くなります。押さえておきたいのは3点です。

1. 譲渡なのか、許諾なのか

著作権そのものを譲り受けるのか、作り手が権利を持ったまま使う許可をもらうのか。キャラクターとして育てて商品や他の媒体へ広げていく計画があるなら、早い段階でこの話をしておいたほうが後々楽になります。違いはイラストの著作権で詳しく扱っています。

2. 誰が「次」を描くのか

見落とされやすいのがここです。権利の整理ができていても、絵柄を再現できる人が確保できているかは別問題です。同じ作家に継続して頼めるのか、別の人が設定画を見て描いても成立するのか。前者なら継続の意思を、後者なら再現に足る資料を、最初のうちに確認しておいてください。

3. 改変してよい範囲

現場では必ず、絵を縮めたい・色を変えたい・一部だけ使いたいという要求が出ます。どこまでを許すかを決めておかないと、気づかないうちにキャラクターの見え方が崩れていきます。許す範囲と許さない一線を文書にしておくのが、結果としていちばん自由に使える状態を作ります。

ここで書いたのは発注する側が押さえておくとよい一般的な考え方です。実際の契約内容は個別の事情によって変わるため、重要な取引では弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

よくあるつまずき方

起きること 本当の原因 先に打てる手
ラフの確認が何周もして進まない 社内で判断する人が決まっていない 発注前に決裁者を1人に定め、その人を①オリエンから同席させる
絵はあるのに現場が使えない 書き出し済みの画像や透過データが納品物に入っていない 納品物リストを発注時に文字で合意する
半年後に絵を増やせない 継続の可否と再現用の資料を確認していない 設定画と使い方の決めごとを初回の納品物に含める
キャラの印象が案件ごとにばらつく 改変してよい範囲が決まっていない 使い方の決めごとを作り、社内で共有する
見積もりが想像と大きく違う 「どこまでの状態を作るか」が伝わっていない 増える予定を含めて、必要な成果物を先に列挙する

並べてみると分かるとおり、原因のほとんどは絵ではなく取り決めの側にあります。逆に言えば、発注の前に紙の上で片づけられるものばかりです。

外注は「描いてもらう」ではなく「増やせる状態を作ってもらう」

キャラクター制作の外注を、絵を買う行為として捉えると、たいてい納品後に苦労します。本当に受け取るべきものは、この先も増やせて、社内の誰が扱っても崩れない状態です。

最初に決めておくことは多いように見えますが、実際に必要なのは「役割」「出る場所」「増える予定」「決める人」の4つだけです。この4つが書けているなら、あとは作り手と一緒に進められます。

どんな絵柄が自社に合うのか分からない段階でも問題ありません。むしろ役割から先に決めるほうが、絵柄の候補は絞りやすくなります。見た目の相談は、役割が決まったあとのほうが早く終わります。

■よくある質問
イラストの発注と、キャラクター制作の発注は何が違いますか?
終わり方が違います。1枚のイラストは完成したら終わりますが、キャラクターは完成してから始まります。使い始めると必ず、最初の1枚には無かった要求(横向き、怒った顔、全身、背景を抜いたデータ、着ぐるみ)が出てきます。それをどこまで先に用意するかが要点です。
自社で作るか、外に出すかはどう判断しますか?
4つの軸で見ます。この先どれくらい絵が増えるか、絵柄をどれだけ確立させたいか、社内に「決める人」がいるか、権利をどう持ちたいか。4つ全部が外注に向いている必要はありませんが、「決める人がいるか」だけは外注の前に必ず埋めてください。ここが空だと進行そのものが止まります。
外注先はどう選べばいいですか?
3タイプあり、得意な場面が違います。個人の作家に直接(絵柄をその人の個性ごと採用したいとき。ただし1人の稼働に依存する)、制作会社・スタジオ(設定づくりから差分・決めごとの整理まで一式で組み立てたいとき)、そしてその中間です。どれが良いという順位はありません。
納品物には何を含めてもらえばいいですか?
絵の枚数だけで合意すると、使う直前に足りないものが見つかります。設定画(正面・横・背面)、表情差分、色の指定、レイヤーの分かれたデータ、書き出し済みの画像——受け取るもののリストを発注の段階で文字にしておいてください。
キャラクターの権利で、決めておくことは何ですか?
3点です。著作権を譲り受けるのか作り手が持ったまま使う許可をもらうのか、誰が「次」を描くのか(同じ作家に継続して頼めるのか、別の人が設定画を見て描いても成立するのか)、そして改変してよい範囲。2点目は見落とされやすく、権利の整理ができていても絵柄を再現できる人が確保できているかは別問題です。
ラフの確認が何周もして進みません。
本当の原因は、社内で判断する人が決まっていないことです。発注前に決裁者を1人に定め、その人をオリエンの段階から同席させてください。関係者が増えるほど、修正の指示は互いに矛盾しはじめます。

※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。

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