キービジュアルとは——メインビジュアルとの違いと、つくる前に決めておくこと

読了7分 推し絵のススメ 編集部
同じキャラクターのキービジュアルがポスター・スマートフォン・トートバッグに展開されている様子のイラスト

メインビジュアル:推し絵のススメ編集部(本記事のために制作したオリジナルイラスト)

■この記事の要点
  • キービジュアルは、作品やキャンペーンの「顔」として、さまざまな媒体に共通して使う中心の絵のこと。
  • メインビジュアルはウェブページの最上部に置く大きな画像を指すことが多く、キービジュアルはそれより広い範囲で使う絵を指すことが多い。ただし現場での呼び方は揺れる。
  • よいキービジュアルは、一枚でコンセプトが伝わり、縦横の比率や切り抜きを変えても成立し、文字を置く余白がある。
  • つくる前に、展開する媒体の一覧、入れる文字要素、解禁のスケジュール、利用範囲と期間を決めておくと、後からの作り直しが減る。
  • 費用や期間は、描き込みの量と展開の広さ、利用範囲で大きく変わるため、条件をそろえて見積もりで確認する。

キービジュアルとは、作品やキャンペーンの「顔」になる絵

キービジュアルとは、作品やキャンペーン、イベントなどの中心になるビジュアルのことです。英語の key visual をそのまま使った言葉で、略して「KV」と呼ばれることもあります。アニメの放送前に発表される一枚の絵、ライブやフェスの告知ポスター、新商品のキャンペーン広告、ゲームの公式サイトのトップを飾る絵。こうした絵は、ポスターやウェブサイト、SNSの告知、駅の広告、グッズのパッケージまで、さまざまな場所に形を変えて登場します。

キービジュアルの役割は、見た人に一瞬で「これは何の話か」を伝え、記憶に残すことです。同じ絵が繰り返し目に入ることで、見る人の頭の中に作品やキャンペーンの印象が積み上がっていきます。そのため、キービジュアルは単なる一枚の絵ではなく、展開されることを前提に設計された絵だと考えると、つくるときに考えるべきことが見えてきます。

この記事では、キービジュアルという言葉の意味と、メインビジュアルとの違い、よいキービジュアルの条件、そして依頼する前に決めておきたいことを順に整理します。イベントやライブのキービジュアルに絞った発注の話は、イベント・ライブのキービジュアルを頼めるイラストレーターの記事でも扱っています。

メインビジュアルとの違い

キービジュアルとよく似た言葉に「メインビジュアル」があります。二つの言葉は混同されやすく、実際の現場でも呼び方が揺れていますが、一般的には次のように使い分けられることが多いです。

言葉 主に指すもの 使われる範囲
キービジュアル 作品やキャンペーン全体の顔になる中心の絵 ポスター、ウェブ、SNS、広告、グッズなど複数の媒体に共通して使う
メインビジュアル ウェブページの最上部などに大きく置く画像 主にウェブサイトの特定のページ

たとえば、新しいアニメの公式サイトでは、キービジュアルをもとにトップページのメインビジュアルがつくられることがあります。この場合、キービジュアルが「元の絵」で、メインビジュアルはそれをウェブの画面に合わせて配置したもの、という関係になります。一方、ウェブ制作の現場では、ページの最上部の大きな画像を「キービジュアル」と呼ぶこともあります。

言葉の正解を決めることよりも大切なのは、依頼するときに「どこに、どの形で使う絵なのか」を具体的に伝えることです。「キービジュアルをお願いします」とだけ伝えると、受け取る側は、ウェブの最上部の一枚を想像するかもしれませんし、あらゆる媒体に展開する中心の絵を想像するかもしれません。用途を言葉ではなく一覧で伝えると、この行き違いは起きにくくなります。

キービジュアルが使われる場面

キービジュアルは、さまざまな分野で使われています。分野によって、求められる役割が少しずつ違います。

  • アニメ・映画……放送や公開の前に作品の世界観を伝える。第1弾、第2弾と段階的に発表されることも多い
  • ゲーム……公式サイト、ストアの紹介ページ、広告などに使われ、作品の雰囲気と登場人物を一枚で伝える
  • ライブ・イベント・フェス……告知ポスター、チケットページ、会場の装飾、グッズまで、イベントの印象を統一する
  • Vtuber・配信者の活動……記念配信や新衣装の発表、周年イベントなど、節目の告知に使われる
  • 企業のキャンペーン・商品……広告、店頭、ウェブ、SNSで同じ絵を使い、キャンペーンの印象をそろえる

どの分野でも共通しているのは、一枚の絵が複数の場所で使い回されることです。だからこそ、つくる段階で展開先を想定しておくことが、キービジュアルの出来を大きく左右します。

よいキービジュアルの3つの条件

見て美しいことはもちろん大切ですが、キービジュアルには、それとは別に求められる条件があります。ここでは代表的な三つを挙げます。

一枚でコンセプトが伝わる

キービジュアルを見た人は、多くの場合、説明文を読む前に絵だけで判断します。誰が主役なのか、どんな雰囲気の作品なのか、明るい話なのか切ない話なのか。伝えたいことを一つに絞り、それが一枚で伝わる構図になっているかが、最初の条件です。あれもこれもと要素を詰め込むと、かえって何も伝わらなくなります。

形を変えても成立する

同じ絵が、縦長のポスター、横長のウェブバナー、正方形のSNS投稿、小さなアイコンなどに使われます。縦横の比率が変わったり、一部を切り抜いたりしても、主役が見え、印象が崩れないことが大切です。そのため、背景を広めに描いておく、人物や要素を別のレイヤーに分けておくといった工夫がよく取られます。

文字を置く余白がある

キービジュアルには、タイトルのロゴ、キャッチコピー、日付、会場名、配信先など、多くの文字が載ります。絵を描き終えてから文字を載せようとすると、置き場所がなく、絵の大事な部分に文字がかぶってしまうことがあります。どんな文字が、どのくらいの量で入るのかを、描き始める前に共有しておくのが理想です。

つくる前に決めておきたい5つのこと

キービジュアルの制作を依頼する前に、発注する側で次のことを決めておくと、話が早く進み、作り直しも減ります。

決めること 具体的な内容
目的と届けたい相手 何を知ってもらいたいのか、誰に届けたいのか、見た人にどう感じてほしいのか
展開する媒体の一覧 ポスター、ウェブ、SNS、広告、グッズ、会場装飾など。媒体ごとの縦横の比率も
入れる文字要素 タイトル、キャッチコピー、日付、クレジット、注意書きなど
公開のスケジュール いつ解禁するのか。第1弾、第2弾と段階的に出すのか
利用範囲と期間 どの媒体で、どの地域で、いつまで使うのか。グッズや販売物への展開の予定

このうち、とくに後から困りやすいのが展開する媒体の一覧と利用範囲です。最初は告知ポスターとウェブだけのつもりが、途中でグッズや大型の看板にも使いたくなる、ということはよくあります。将来の可能性も含めて最初に書き出しておくと、構図の設計にも、見積もりにも反映できます。利用範囲の考え方はイラストの著作権ガイドに、費用の決まり方はイラスト依頼の相場の考え方にまとめています。

制作の流れ——ラフで構図を決めてから描き込む

キービジュアルの制作は、依頼先や分野によって細かな違いはありますが、おおむね次のように進みます。

  • ヒアリング……目的、届けたい相手、展開先、文字要素、スケジュールを共有する
  • コンセプトとラフ……構図の案をいくつか出し、主役の配置や文字の置き場所を確認する
  • 線画・彩色(清書)……決まった構図に沿って描き込む
  • デザインとの合わせ込み……ロゴや文字を載せ、媒体ごとのレイアウトをつくる
  • 納品と展開……媒体ごとに必要なデータを書き出し、順に公開する

イラストを描く人と、文字やレイアウトを担当するデザイナーが別の場合は、ラフの段階で両者が構図を確認できるようにしておくと、文字が載らない、切り抜けない、といった問題を早めに防げます。完成したイラストに後から文字を足すのではなく、文字の入る絵として最初から設計することが、キービジュアルづくりのコツです。

期間は、描き込みの量や関わる人数、確認の回数で大きく変わります。解禁日が決まっている場合は、そこから逆算し、社内や関係者の確認にかかる日数も含めて余裕を持って依頼してください。

Vtuberや個人の活動のキービジュアル

キービジュアルは、企業や大きな作品だけのものではありません。Vtuberや配信者の記念配信、新衣装のお披露目、周年の企画などでも、告知のための一枚の絵がつくられています。個人の活動であっても、考えることは基本的に同じです。どこで告知するのか、どんな文字を入れるのか、その絵をサムネイルやグッズにも使うのかを、依頼の最初に伝えておきます。

とくに、収益のある配信や販売するグッズに使う予定がある場合は、利用範囲を依頼の段階ではっきりさせておくことが大切です。Vtuberの立ち絵や活動用のイラストの依頼については、Vtuberのイラストを依頼するときの記事もあわせてご覧ください。

まとめ——キービジュアルは「展開される絵」として依頼する

キービジュアルは、作品やキャンペーンの顔として、さまざまな場所に形を変えて登場する絵です。だからこそ、一枚の絵としての美しさに加えて、形を変えても成立すること、文字と共存できることが求められます。依頼する側が、目的、展開先、文字要素、スケジュール、利用範囲を最初にそろえておけば、作家はその枠の中で、最も伝わる一枚を考えることに集中できます。

イラストの発注全般の流れはイラスト発注の完全ガイドに、最初の連絡で伝える項目はイラスト依頼の例文とテンプレートにまとめています。なお、ここで扱ったのは一般的な考え方です。権利や契約の取り決めについて判断に迷う場合は、専門家にご相談ください。

■よくある質問
キービジュアルとメインビジュアルは何が違いますか?
一般には、メインビジュアルはウェブサイトのトップなど、ページの最上部に大きく置く画像を指すことが多く、キービジュアルはポスター、ウェブ、SNS、グッズなど複数の媒体に共通して使う中心の絵を指すことが多いです。ただし現場によって呼び方が入れ替わることもあるため、依頼の際は「どこに、どの形で使う絵か」を具体的に伝えるのが確実です。
キービジュアルはイラストでないといけませんか?
いいえ。写真やグラフィック、3DCGでつくられるキービジュアルもあります。アニメやゲーム、Vtuberの活動のようにキャラクターが主役の場合はイラストで描かれることが多く、商品や人物が主役の場合は写真が選ばれることもあります。
キービジュアルを依頼するとき、最初に何を伝えればいいですか?
絵の内容より先に、何のキービジュアルなのか、誰に届けたいのか、どの媒体に展開するのか、どんな文字を入れるのか、いつ公開するのかを伝えると、作家が構図を考えやすくなります。展開先の一覧はできるだけ最初にそろえておくのがおすすめです。
キービジュアルの制作費の相場はいくらですか?
一律の相場で答えるのは難しく、描き込みの量、キャラクターの人数、背景の有無、展開する媒体の広さ、利用期間などで大きく変わります。条件を書き出したうえで、同じ条件で見積もりを依頼して比べてください。
一度つくったキービジュアルを、あとからグッズや広告に使ってもいいですか?
最初に取り決めた利用範囲によります。利用範囲を広げたい場合は、勝手に使わず作家や権利者に相談し、必要に応じて追加の取り決めを行ってください。最初の段階で、将来使う可能性のある用途まで書き出しておくと、後の相談がスムーズです。

※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。

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