- アニメーションは「キャラクターが演技する」もの、モーショングラフィックスは「情報が動く」もの。発注書の上では分けておくと事故が減る。
- 動きが伝わるのは「見る順番」を指定できるから。1枚の絵は見る順番までは決めきれない。
- モーションの良し悪しを分ける最大の要素はイージング(動き始めてから止まるまでの速度の配分)。
- 等速(リニア)が安っぽく見えるのは、現実にそんな動きがほとんど無く、脳が「作り物」と判定するため。
- 修正は「速度・タイミング・幅」のどれの話かが伝わるだけで一往復で終わることが多い。
- 文字は読まれるまでに時間がかかる。絵と同時に出すと文字に気づかれないまま流れる。
- 尺は時間ではなく要素数の話。6秒で1つ、15秒で2〜3つ、30秒で4〜5つ。
- 縦型と横型は切り抜けば済む話ではなく、別の作品として考える。最初にどちらが本番かを決める。
「この絵、動かせますか?」——イラストの発注の最後に、この一言が付いてくることが増えた。SNSのフィード、店頭のサイネージ、展示のループ映像、アプリの読み込み画面。止まった絵を置く場所より、少しだけ動く絵を求められる場所のほうが、静かに増えている。
とはいえ「動かす」の中身はかなり広い。今回は発注する側にも受ける側にも地図になるように、モーショングラフィックスの基礎を、なるべく生活の言葉に翻訳しながら整理してみたい。用語を覚える話ではなく、打ち合わせで話が噛み合うようになる話だ。

アニメーションとモーショングラフィックスは、どこが違う
最初のつまずきポイント。この2つは現場でも曖昧に混ざって使われるが、発注書の上では分けておくと事故が減る。
乱暴に言い切ると、アニメーションは「キャラクターが演技する」もの、モーショングラフィックスは「情報が動く」もの。前者は感情と物語を運ぶ。振り向く、まばたきをする、走る。動きの説得力が、そのまま作画量になる世界だ。
後者は、図形・文字・写真・イラストといった素材を、レイアウトとタイミングで構成する。ロゴが組み上がる、グラフが伸びる、コピーが一行ずつ立ち上がる。素材が仕上がっていれば、動きの設計そのものが仕事になる。
もちろん境界は溶ける。1枚のイラストをパーツに分け、髪や布をゆるく揺らす表現は、ちょうど両者のあいだにいる。ここをすり合わせないまま「動かしてください」と言うと、片方は演技を、もう片方は図形の移動を想像したまま初稿を迎えることになる。
静止画が動くと、なぜ伝わるのか
理由はシンプルで、動きは「見る順番」を指定できるから。
1枚の絵は、どこから見るかを受け手に委ねている。構図や色で誘導はできても、視線の順番までは決めきれない。動く絵は「いま光ったここ」を指させる。人の目は動くものを反射的に追うので、作り手は時間軸を使って、第一印象・補足・結論の順を組み立てられる。
もうひとつは、間(ま)を持てること。静止画では同時に置くしかない情報を、モーションは0.3秒ずらして置ける。このズレがあるだけで、画面の密度は同じでも受け手の負荷は下がる。動画は情報量が増えると思われがちだが、実際は情報を時間に分散して薄める技術でもある。

イージングという「気持ちよさ」の正体
モーションの良し悪しを分ける最大の要素が、たぶんこれ。イージングとは、物が動きはじめてから止まるまでの速度の配分のことだ。
等速がなぜか安っぽく見える理由
A地点からB地点まで同じ速さで移動する。これがリニア(等速)。理屈の上では正しいのに、見ると妙に安い。理由は、現実にそんな動きがほとんど無いから。手を伸ばすときも、ドアが閉まるときも、必ず加速と減速がある。等速は脳が知っている物理から外れていて、無意識に「作り物」と判定されてしまう。
だから多くの動きは「すっと出て、ゆっくり止まる」形にする。出だしを速く、着地をなだらかに。そこへ、行き過ぎて少し戻る動きを数フレーム足すと、途端に生っぽくなる。かわいさや軽やかさは、この数フレームの寄り道に宿っている。
気持ちよさは、たいてい最後の0.2秒で決まる。
発注側が使うと通じる言葉
- 「もう少し粘ってほしい」——減速をゆるやかに、余韻を長く
- 「キレを出したい」——出だしを速く、止まりを短く
- 「重さがほしい」——加速を長く、止まる直前に沈み込みを
- 「うるさいので落ち着かせたい」——同時に動く要素を減らす、動きの幅を小さく
「なんか違う」よりは、ずっと直りやすい。速度・タイミング・幅のどれの話かが伝わるだけで、修正は一往復で終わることが多い。

文字が動く意味
タイポグラフィが動く映像は多いが、動かす理由は装飾ではない。文字は読まれるまでに時間がかかるという事実への対処だ。
絵は一瞬で印象が届く。文字は目で追って、はじめて意味になる。この時間差を無視して同時に出すと、受け手は絵を見て、文字に気づかないまま次へ流れていく。だから文字は、絵より少し遅れて、あるいは絵が落ち着いた瞬間に立ち上がる。
注意したいのは、一文字ずつバラバラに動かす表現。楽しいけれど、読む速度は確実に落ちる。読ませたい文字ほど動かしすぎない。短いコピーは単語のかたまりで、長い文章はブロックごとフェードで扱う。派手に動かしていいのは、読ませなくても伝わる文字——ロゴや、効果音のような一語だ。
尺の設計:6秒・15秒・30秒
「何秒でお願いします」は、実は「いくつ伝えていいですか」とほぼ同義だ。尺は時間の話ではなく、要素数の話として設計したほうがうまくいく。
| 尺 | 入る要素 | 向いている用途 |
|---|---|---|
| 6秒 | 1つ。ロゴかコピーか、どちらか | 認知の反復、フィードの合間 |
| 15秒 | 2〜3つ。つかみ→本題→締め | 告知、キャンペーン |
| 30秒 | 4〜5つ。展開と間を作れる | 商品紹介、ブランドムービー |
いちばん多い事故は、15秒に30秒分を詰めること。要素を減らさず尺だけ縮めると、動きは全部速くなり、イージングの余韻から削られ、「情報も入らないし気持ちよくもない」映像になる。削るのは動きではなく要素。ここを握れているかで仕上がりは変わる。

縦型と横型は、別の作品として考える
同じ内容の縦横リサイズ。これも定番の落とし穴で、切り抜けば済む話ではない。
横型は視線を横に運べる。左から右へ流す、左に絵・右に文字、といった構成が効く。縦型は上下の移動が主役になり、画面のどこかに指が乗る前提で、下端に大事なものを置かないほうがいい。文字の大きさも変わる。横型で成立していたサイズは、縦型ではおおむね小さすぎる。
実務的には、最初に「縦が本番、横は派生」あるいはその逆を決めておくのがいちばん安い。両方を同格で作るなら、それは2本の制作だと考えて予算と工数を組む。後から「縦版も」となったときに、素材がレイヤー分けされたまま保管されているかどうかが効いてくる。
発注前に決めておくと早い5つ
- 再生される場所——音は出るか、ループするか、何度見られるか
- 尺と、伝えたい要素の数——優先順位を1位まで絞る
- 縦横のどちらが本番か——派生は後から足せる形にする
- 素材の状態——イラストはレイヤー分けできるか、権利は動画利用まで含むか
- 納品形式——mp4か、透過のある形式か、ループ点の指定はあるか
特に4つ目。静止画の利用許諾と、動画化の許諾は別物になることが多い。既存のイラストを動かしたいなら、描いた本人に相談するのが結局いちばん速く、安全でもある。イラストレーターとモーショングラファーが同じ場所に在籍するOSERU IMG.のようなチームなら、絵と動きをまとめて相談でき、この確認の往復自体が減る。

おわりに:動かす前提で、絵を描く
モーショングラフィックスは、絵に付ける装飾ではない。絵が持っている情報を、時間の上に並べ直す作業だ。何を先に見せ、何を待たせ、どこで止めるか。その判断は、構図を決めるときの判断とかなり近い。
だから、動く前提の絵は描き方から少し違う。余白を多めに取る、パーツを分けやすい重ね方にする、動いても崩れない色にする。「動かせますか?」の一言は、できれば発注の最後ではなく、最初に置いてほしい。そこから逆算できると、同じ予算でも仕上がりは目に見えて変わる。
- アニメーションとモーショングラフィックスは、どう違いますか?
- 乱暴に言うと、アニメーションは「キャラクターが演技する」もので、感情と物語を運びます。モーショングラフィックスは「情報が動く」もので、図形・文字・写真・イラストといった素材を時間の上に並べ直します。発注書の上では分けておくと事故が減ります。
- なぜ等速の動きは安っぽく見えるのですか?
- 現実にそんな動きがほとんど無いからです。手を伸ばすときもドアが閉まるときも必ず加速と減速があります。等速は脳が知っている物理から外れているため、無意識に「作り物」と判定されます。多くの動きは「すっと出て、ゆっくり止まる」形にします。
- 動きの修正を伝えるには、どう言えばいいですか?
- 速度・タイミング・幅のどれの話かを示してください。「もう少し粘ってほしい」は減速をゆるやかに、「キレを出したい」は出だしを速く止まりを短く、「重さがほしい」は加速を長く、「うるさいので落ち着かせたい」は同時に動く要素を減らす。「なんか違う」よりずっと直りやすくなります。
- 尺は何秒にすればいいですか?
- 秒数ではなく要素数で考えます。6秒なら1つ(ロゴかコピーのどちらか)、15秒なら2〜3つ(つかみ→本題→締め)、30秒なら4〜5つ(展開と間を作れる)。いちばん多い事故は、短い尺に要素を詰め込むことです。
- 縦型と横型は、同じ素材を切り抜けば作れますか?
- 作れません。横型は視線を横に運べるので左に絵・右に文字といった構成が効き、縦型は上下の移動が主役で、画面に指が乗る前提から下端に大事なものを置けません。文字サイズも変わります。最初に「縦が本番か、横が本番か」を決めてください。
- 静止画のイラストを動画に使うときの注意は?
- 静止画の利用許諾と、動画化の許諾は別物になることがあります。素材の権利が動画利用まで含むか、イラストがレイヤー分けできる状態かを、発注前に確認してください。
※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。
OSERU IMG.
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OSERU IMG. はイラストレーター・キャラクターデザイナー・モーショングラファーが所属する クリエイティブスタジオです。作風・実績から探して、そのまま相談できます。 「まだ決まっていない」段階のご相談も歓迎です。
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