イラストのお仕事 #はじめて #発注のコツ

イラストはどこに頼めるのか——4つの経路と、向き不向きの見分け方

読了7分 推し絵のススメ 編集部
4方向に矢印が伸びる道しるべのイラスト

メインビジュアル:推し絵のススメ編集部(本記事のために制作したオリジナルイラスト)

■この記事の要点
  • 依頼できる場所は4種類。クラウドソーシング/SNSで直接/エージェンシー・マッチング/制作会社・スタジオ。
  • 4つの違いを一言でいえば、進行と権利のリスクを自分で持つか、預けるか。
  • クラウドソーシングは価格が事前に見えるが、表示価格が「どこまで使えるか」を含んでいるとは限らない。商用利用や二次利用は別料金のことが多い。
  • SNSで直接は作風の一致がいちばん高い一方、利用範囲・期間・修正回数の設計も、契約と請求も自前になる。
  • イラストの金額は経路ではなく条件で決まる。経路の違いで乗るのは仲介や進行管理の部分であって、絵そのものの値段ではない。
  • 経路を先に決めようとすると迷う。何点いるか/どこまで使うか/いつまでか/誰が決めるか、の順で決める。
  • 途中で経路を変えるとき、条件(目的・媒体・期間・参考イメージ)は引き継げるが、前の作家が描いたラフや線画は引き継げない。

イラストを頼みたい。そう思って検索すると、サービスの比較記事がいくつも出てきます。けれど並んでいるのは料金と登録者数ばかりで、自分の案件にどれが合うのかは分からないままのことが多い。

依頼先は、サービス名ではなく経路で捉えると整理できます。大きく4つあり、それぞれ得意な案件がはっきり違います。

依頼できる場所は大きく4種類

経路 どういう仕組みか 向いている案件
①クラウドソーシング/スキルマーケット プラットフォームに登録した個人へ、画面上で直接依頼する 点数が少なく、用途がはっきりしている。予算を抑えたい
②SNSで直接 作品を見て、作家本人に連絡する この人の絵でなければ成立しない。作風が決め手
③エージェンシー/マッチング 作家を抱える窓口が、条件に合う人を紹介する 候補を比べたい。契約や請求をまとめたい
④制作会社・スタジオ 案件全体を請け負い、作家の手配から進行まで担う 点数が多い。関係者が多い。企画から相談したい

どれが優れているという話ではありません。1枚の挿絵に④を使えば過剰ですし、50点のキャラクター展開を①で回すのは苦しくなります。

①クラウドソーシング/スキルマーケット

画面上で作家を探し、条件を選んで依頼する形です。金額が最初から提示されていることが多く、見通しが立てやすい。

得意なこと 気をつけること
価格が事前に見える 表示価格が「どこまで使えるか」を含んでいるとは限らない
すぐ着手してもらえることが多い 商用利用や二次利用は別料金のことが多い。必ず確認する
少額から試せる 複雑な要件のすり合わせには向かない
評価が見える 評価の高さは進行の丁寧さを示すが、作風の一致は別問題

注意したいのは利用範囲です。個人利用の価格で頼んだ絵を会社の広告に使う、といった行き違いが起きやすい経路でもあります。商用で使うなら、その前提で最初から相談してください。

②SNSで直接

作品を見て「この人がいい」と決まっているときに、いちばん確実な経路です。間に誰も入らないぶん、意図がまっすぐ伝わります。

  • 作風の一致がいちばん高い……見てから選んでいるので当然
  • 条件を自分で設計する必要がある……利用範囲、期間、修正回数を自分で決めて伝える
  • 契約と請求は自前……書面の用意、支払い手続き、源泉徴収の扱いまで自社で対応する
  • 受けてもらえるとは限らない……手が空いていない、その用途は受けていない、ということがある

この経路を選ぶなら、依頼文の質がそのまま結果を左右します。何をどこまで伝えるかは、依頼の例文をまとめた記事が参考になります。

③エージェンシー/マッチング

作家を抱える窓口に相談し、条件に合う人を紹介してもらう形です。候補を並べて比べられるのが特徴です。

得意なこと 気をつけること
条件に合う候補を出してもらえる 窓口が扱っている作家の中からの選択になる
契約と請求が一本化される 仲介にかかる費用が金額に乗る
進行の一部を見てもらえる どこまで見るかは窓口によって幅がある

「作風は決めきれていないが、条件ははっきりしている」という案件に向いています。逆に作家が決まっているなら、②のほうが早いことが多い。

④制作会社・スタジオ

案件そのものを請け負う形です。作家の手配だけでなく、目的の整理、構成、進行管理、複数点の統一感の担保までを含みます。

  • 点数が多いときに効く……10点、50点と増えるほど、進行管理の価値が上がる
  • 企画の段階から相談できる……「何を描くべきか」が決まっていなくてよい
  • 関係者が多い案件に向く……社内の確認が何段階もある、他社と共同で進めている
  • 権利処理をまとめて任せられる……利用範囲や期間の設計を含めて相談できる
  • 1点だけの依頼には重い……進行の体制ごと使うことになるため

選ぶ軸は「誰がリスクを持つか」

4つの経路の違いを一言でいえば、進行と権利のリスクを自分で持つか、預けるかです。

軸 ①②(直接) ③④(間に入る)
価格 抑えやすい 仲介・進行のぶんが乗る
進行の担い手 自社 窓口または制作会社
契約・請求 自社で用意する まとめてもらえる
権利の設計 自分で条件を決める 相談しながら決められる
止まったときの対応 自社で立て直す 代替案を出してもらえることが多い

社内に発注の経験があり、条件を自分で設計できるなら、直接の経路はコストの面で有利です。反対に、初めての発注で、締切が動かせず、社内の確認が多い案件なら、間に人が入る形のほうが結果的に速く済みます。

失敗しやすい組み合わせ

やりがちなこと 何が起きるか
1点の価格で、複数媒体に展開する前提で頼む あとから利用範囲の追加費用が発生する
締切が動かせない案件を、初めての相手に直接頼む 止まったときに代わりがいない
候補を集めるために、複数の作家にラフを無償で頼む 制作物を無償で集める形になり、断られる
社内の決裁者が定まらないまま進める 確認の往復が伸び、修正回数の上限を超える
作風だけで選び、条件を後回しにする 見積もりの段階で予算と合わず、やり直しになる

経路を途中で変えるとき

進めてみて合わないと分かることもあります。途中で変えること自体は問題ありませんが、引き継げるものと引き継げないものがあります。

  • 引き継げる……目的、掲載媒体、利用期間、参考イメージ、掲載面のサイズ。これらは条件なので、そのまま次の相手に渡せる
  • 引き継げない……前の作家が描いたラフや線画。制作物なので、別の人に渡して続きを描いてもらうことはできない

後者は誤解されやすい点です。途中まで進んだ絵は、たとえ費用を払っていても「どこまで使えるか」が契約で決まっています。別の作家に渡して完成させる想定があるなら、最初からその前提で合意しておく必要があります。

よくある質問

複数の経路を同時に当たってよいですか

問題ありません。ただし同じ条件を渡してください。経路によって含まれる範囲が違うため、条件を揃えないと金額の比較になりません。

海外の作家に頼めますか

頼めます。ただし契約と支払いの手続き、時差による進行、権利の準拠法などの論点が増えます。初めてなら、間に入る経路のほうが負担は少なくなります。

実績のない作家に頼むのは不安です

実績の量と、その案件に合うかどうかは別の話です。見るべきは「同じ用途の仕事をしたことがあるか」。パッケージに使うなら、印刷物の経験があるかどうかが効きます。画面で見るのと刷ったのとでは、色の出方が変わるからです。作品数より、用途の一致を見てください。

安く済ませたいときはどうすればいいですか

経路を変えるより、条件を絞るほうが効きます。利用範囲を必要な分だけにする、期間を区切る、独占をやめる、点数を減らす。納期を詰めることだけは、どの経路でも安くなりません。

進み方がどう違うか

同じ「イラストを1枚頼む」でも、経路によってこちらがやることの量が変わります。

場面 ①②(直接) ③④(間に入る)
相手を探す 自分で探して候補を決める 条件を伝えると候補が出てくる
条件を決める 利用範囲・期間・独占を自分で設計する 相談しながら固められる
見積もり 作家と直接やりとりする まとめて提示される
契約 自社で書面を用意する 定型の契約書がある
進行 自分で確認のタイミングを管理する 進行を見てもらえる
支払い 個別に処理する 一本化される

初めての発注で見落とされがちなのが、契約と支払いの手間です。絵が良ければ終わり、ではありません。個人への支払いでは源泉徴収の扱いなど、経理側の確認が必要になることもあります。社内にその経験がなければ、そこだけでも間に入ってもらう価値があります。

金額の見当をどうつけるか

経路ごとに「だいたいこのくらい」と言えれば楽なのですが、イラストの金額は経路ではなく条件で決まります。同じ制作会社でも、社内資料に1回使う絵と、駅貼りポスターで1年間使う絵では桁が変わる。

だから比較するときは、先に条件を固めて、同じ条件で見積もりを取ってください。経路の違いで乗るのは、仲介や進行管理にあたる部分であって、絵そのものの値段ではありません。

決める順番

経路を先に決めようとすると迷います。順番を逆にしてください。

  • 何点いるか……1点なのか、10点なのか
  • どこまで使うか……媒体、期間、独占の有無
  • いつまでか……動かせる締切か、動かせないか
  • 誰が決めるか……社内の確認は何段階あるか

点数が1〜2点で、条件がはっきりしていて、締切に余裕があるなら①か②。作風が決め手なら②。候補を比べたいなら③。点数が多い、企画から相談したい、関係者が多いなら④。おおよそこの順で絞れます。

この四つが決まれば、経路はほぼ自動的に絞れます。そして決まった内容は、そのまま依頼文に使えます。どこに頼むかより先に、何を頼むかを決める。遠回りに見えて、これがいちばん速い進め方です。

※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。

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