- 依頼できる場所は4種類。クラウドソーシング/SNSで直接/エージェンシー・マッチング/制作会社・スタジオ。
- 4つの違いを一言でいえば、進行と権利のリスクを自分で持つか、預けるか。
- クラウドソーシングは価格が事前に見えるが、表示価格が「どこまで使えるか」を含んでいるとは限らない。商用利用や二次利用は別料金のことが多い。
- SNSで直接は作風の一致がいちばん高い一方、利用範囲・期間・修正回数の設計も、契約と請求も自前になる。
- イラストの金額は経路ではなく条件で決まる。経路の違いで乗るのは仲介や進行管理の部分であって、絵そのものの値段ではない。
- 経路を先に決めようとすると迷う。何点いるか/どこまで使うか/いつまでか/誰が決めるか、の順で決める。
- 途中で経路を変えるとき、条件(目的・媒体・期間・参考イメージ)は引き継げるが、前の作家が描いたラフや線画は引き継げない。
イラストを頼みたい。そう思って検索すると、サービスの比較記事がいくつも出てきます。けれど並んでいるのは料金と登録者数ばかりで、自分の案件にどれが合うのかは分からないままのことが多い。
依頼先は、サービス名ではなく経路で捉えると整理できます。大きく4つあり、それぞれ得意な案件がはっきり違います。
依頼できる場所は大きく4種類
| 経路 | どういう仕組みか | 向いている案件 |
|---|---|---|
| ①クラウドソーシング/スキルマーケット | プラットフォームに登録した個人へ、画面上で直接依頼する | 点数が少なく、用途がはっきりしている。予算を抑えたい |
| ②SNSで直接 | 作品を見て、作家本人に連絡する | この人の絵でなければ成立しない。作風が決め手 |
| ③エージェンシー/マッチング | 作家を抱える窓口が、条件に合う人を紹介する | 候補を比べたい。契約や請求をまとめたい |
| ④制作会社・スタジオ | 案件全体を請け負い、作家の手配から進行まで担う | 点数が多い。関係者が多い。企画から相談したい |
どれが優れているという話ではありません。1枚の挿絵に④を使えば過剰ですし、50点のキャラクター展開を①で回すのは苦しくなります。
①クラウドソーシング/スキルマーケット
画面上で作家を探し、条件を選んで依頼する形です。金額が最初から提示されていることが多く、見通しが立てやすい。
| 得意なこと | 気をつけること |
|---|---|
| 価格が事前に見える | 表示価格が「どこまで使えるか」を含んでいるとは限らない |
| すぐ着手してもらえることが多い | 商用利用や二次利用は別料金のことが多い。必ず確認する |
| 少額から試せる | 複雑な要件のすり合わせには向かない |
| 評価が見える | 評価の高さは進行の丁寧さを示すが、作風の一致は別問題 |
注意したいのは利用範囲です。個人利用の価格で頼んだ絵を会社の広告に使う、といった行き違いが起きやすい経路でもあります。商用で使うなら、その前提で最初から相談してください。
②SNSで直接
作品を見て「この人がいい」と決まっているときに、いちばん確実な経路です。間に誰も入らないぶん、意図がまっすぐ伝わります。
- 作風の一致がいちばん高い……見てから選んでいるので当然
- 条件を自分で設計する必要がある……利用範囲、期間、修正回数を自分で決めて伝える
- 契約と請求は自前……書面の用意、支払い手続き、源泉徴収の扱いまで自社で対応する
- 受けてもらえるとは限らない……手が空いていない、その用途は受けていない、ということがある
この経路を選ぶなら、依頼文の質がそのまま結果を左右します。何をどこまで伝えるかは、依頼の例文をまとめた記事が参考になります。
③エージェンシー/マッチング
作家を抱える窓口に相談し、条件に合う人を紹介してもらう形です。候補を並べて比べられるのが特徴です。
| 得意なこと | 気をつけること |
|---|---|
| 条件に合う候補を出してもらえる | 窓口が扱っている作家の中からの選択になる |
| 契約と請求が一本化される | 仲介にかかる費用が金額に乗る |
| 進行の一部を見てもらえる | どこまで見るかは窓口によって幅がある |
「作風は決めきれていないが、条件ははっきりしている」という案件に向いています。逆に作家が決まっているなら、②のほうが早いことが多い。
④制作会社・スタジオ
案件そのものを請け負う形です。作家の手配だけでなく、目的の整理、構成、進行管理、複数点の統一感の担保までを含みます。
- 点数が多いときに効く……10点、50点と増えるほど、進行管理の価値が上がる
- 企画の段階から相談できる……「何を描くべきか」が決まっていなくてよい
- 関係者が多い案件に向く……社内の確認が何段階もある、他社と共同で進めている
- 権利処理をまとめて任せられる……利用範囲や期間の設計を含めて相談できる
- 1点だけの依頼には重い……進行の体制ごと使うことになるため
選ぶ軸は「誰がリスクを持つか」
4つの経路の違いを一言でいえば、進行と権利のリスクを自分で持つか、預けるかです。
| 軸 | ①②(直接) | ③④(間に入る) |
|---|---|---|
| 価格 | 抑えやすい | 仲介・進行のぶんが乗る |
| 進行の担い手 | 自社 | 窓口または制作会社 |
| 契約・請求 | 自社で用意する | まとめてもらえる |
| 権利の設計 | 自分で条件を決める | 相談しながら決められる |
| 止まったときの対応 | 自社で立て直す | 代替案を出してもらえることが多い |
社内に発注の経験があり、条件を自分で設計できるなら、直接の経路はコストの面で有利です。反対に、初めての発注で、締切が動かせず、社内の確認が多い案件なら、間に人が入る形のほうが結果的に速く済みます。
失敗しやすい組み合わせ
| やりがちなこと | 何が起きるか |
|---|---|
| 1点の価格で、複数媒体に展開する前提で頼む | あとから利用範囲の追加費用が発生する |
| 締切が動かせない案件を、初めての相手に直接頼む | 止まったときに代わりがいない |
| 候補を集めるために、複数の作家にラフを無償で頼む | 制作物を無償で集める形になり、断られる |
| 社内の決裁者が定まらないまま進める | 確認の往復が伸び、修正回数の上限を超える |
| 作風だけで選び、条件を後回しにする | 見積もりの段階で予算と合わず、やり直しになる |
経路を途中で変えるとき
進めてみて合わないと分かることもあります。途中で変えること自体は問題ありませんが、引き継げるものと引き継げないものがあります。
- 引き継げる……目的、掲載媒体、利用期間、参考イメージ、掲載面のサイズ。これらは条件なので、そのまま次の相手に渡せる
- 引き継げない……前の作家が描いたラフや線画。制作物なので、別の人に渡して続きを描いてもらうことはできない
後者は誤解されやすい点です。途中まで進んだ絵は、たとえ費用を払っていても「どこまで使えるか」が契約で決まっています。別の作家に渡して完成させる想定があるなら、最初からその前提で合意しておく必要があります。
よくある質問
複数の経路を同時に当たってよいですか
問題ありません。ただし同じ条件を渡してください。経路によって含まれる範囲が違うため、条件を揃えないと金額の比較になりません。
海外の作家に頼めますか
頼めます。ただし契約と支払いの手続き、時差による進行、権利の準拠法などの論点が増えます。初めてなら、間に入る経路のほうが負担は少なくなります。
実績のない作家に頼むのは不安です
実績の量と、その案件に合うかどうかは別の話です。見るべきは「同じ用途の仕事をしたことがあるか」。パッケージに使うなら、印刷物の経験があるかどうかが効きます。画面で見るのと刷ったのとでは、色の出方が変わるからです。作品数より、用途の一致を見てください。
安く済ませたいときはどうすればいいですか
経路を変えるより、条件を絞るほうが効きます。利用範囲を必要な分だけにする、期間を区切る、独占をやめる、点数を減らす。納期を詰めることだけは、どの経路でも安くなりません。
進み方がどう違うか
同じ「イラストを1枚頼む」でも、経路によってこちらがやることの量が変わります。
| 場面 | ①②(直接) | ③④(間に入る) |
|---|---|---|
| 相手を探す | 自分で探して候補を決める | 条件を伝えると候補が出てくる |
| 条件を決める | 利用範囲・期間・独占を自分で設計する | 相談しながら固められる |
| 見積もり | 作家と直接やりとりする | まとめて提示される |
| 契約 | 自社で書面を用意する | 定型の契約書がある |
| 進行 | 自分で確認のタイミングを管理する | 進行を見てもらえる |
| 支払い | 個別に処理する | 一本化される |
初めての発注で見落とされがちなのが、契約と支払いの手間です。絵が良ければ終わり、ではありません。個人への支払いでは源泉徴収の扱いなど、経理側の確認が必要になることもあります。社内にその経験がなければ、そこだけでも間に入ってもらう価値があります。
金額の見当をどうつけるか
経路ごとに「だいたいこのくらい」と言えれば楽なのですが、イラストの金額は経路ではなく条件で決まります。同じ制作会社でも、社内資料に1回使う絵と、駅貼りポスターで1年間使う絵では桁が変わる。
だから比較するときは、先に条件を固めて、同じ条件で見積もりを取ってください。経路の違いで乗るのは、仲介や進行管理にあたる部分であって、絵そのものの値段ではありません。
決める順番
経路を先に決めようとすると迷います。順番を逆にしてください。
- 何点いるか……1点なのか、10点なのか
- どこまで使うか……媒体、期間、独占の有無
- いつまでか……動かせる締切か、動かせないか
- 誰が決めるか……社内の確認は何段階あるか
点数が1〜2点で、条件がはっきりしていて、締切に余裕があるなら①か②。作風が決め手なら②。候補を比べたいなら③。点数が多い、企画から相談したい、関係者が多いなら④。おおよそこの順で絞れます。
この四つが決まれば、経路はほぼ自動的に絞れます。そして決まった内容は、そのまま依頼文に使えます。どこに頼むかより先に、何を頼むかを決める。遠回りに見えて、これがいちばん速い進め方です。
※ 本記事に掲載しているイラストは、当メディアのために制作したオリジナル作品です。 記事中で言及する作品・キャラクター・商品名の著作権は各権利者に帰属します。
OSERU IMG.
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